プロフィール

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東京藝術大学音楽学部器楽科ヴァイオリン専攻卒業。在学中バッハカンタータクラブに所属し小林道夫氏の指導を受ける。
ニース夏期音楽アカデミーに参加し、アーロン・ローザンドの指導を受ける。東京の4つの女子大合同弦楽アンサンブルとバッハのオーボエとヴァイオリンのための協奏曲を演奏。
在京オーケストラの賛助出演のほか、「屋根の上のヴァイオリン弾き」「美女と野獣」など多数のミュージカルにオーケストラメンバーとして出演。
2012年、New Approach to Violin Playingに参加しカトー・ハヴァシュの指導を受ける。KHANA(Kato Havas Association for the New Approach)会員。
2012年地元柏でのチャリティコンサートを始めに、現在ソロコンサートに力を入れている。聴衆と一体になるコンサートをモットーに、身近な曲、親しみやすい曲、音楽の感動以上の感動を共有する空間作りに邁進している。
ボランティアでは、20年あまりにわたり国立ガンセンターでの演奏会に出演。また、TARAT1983を通じて被災者に直接支援を届ける活動に参加。復興支援コンサートを開催している。
これまでに、山岡耕筰、故岩崎洋三、稲垣琢磨の各氏に師事。
所属:及川音楽事務所


「涙が出て止まらなかった」と初めて言われたのは、2003年の末にグノーのアヴェマリアを弾いたときのことです。

 2003年6月に主人が亡くなりました。再生不良性貧血という難病でした。当時子どもたちは2歳と5歳。上の子は、5歳の誕生日がお葬式の日でした。

 結婚以来家族と過ごすことが最優先で自分のことは後回しでした。主人が難病を抱えていたからです。特に、主人が入院してからはヴァイオリンをさわることもない毎日でした。

 主人が亡くなったあとの喪失感は、体験したかたならお分かりだと思いますがとても言葉で表すことのできないものです。
 その、とても立ち上がれないと思ったところから這い上がってこられたのは、主人の生前の言葉や子どもたちの存在でした。

そして気づいたのです。

今ここに生きているということの重み・神秘さ

目の前になくても本当に大事なものがあるということ

主人に対しての心からの感謝の気持ち

自分が支えていたと思っていた主人や子どもたちに実は私が支えられていたということ…


 コンサートに出てくれと言われたとき、あまりの練習のできていなさに申し訳なく思いつつも、なんとか弾ける曲を選んで演奏することになりました。

 技術的にはお恥ずかしい演奏でしたが、私自身、自分の思いのたけを表現できる場を与えていただいたことは本当にありがたいことでした。

 そのとき聴いてくださった方のお一人が翌日お花を届けてくださり、「涙が出て止まらなかった」とおっしゃってくださったのでした。
 私の状況を全然知らずにお聴きになったそうで、あとから知ったのだとか。
 
その方も、お身内の方が生死に関わるご病気でおつらい日々だったそうでした。音楽だけでここまで伝わるものかと本当に驚きました。

 実は、私は以前から、音楽で人を感動させることと高い技術力とは必ずしも一致しないのではないかと思っていました。まさに、そのことが現実となった瞬間でした。



 学生の頃、同級生はみな上手でした。今現在、第一線で活躍する人も多いです。
 一方私は、音楽の道を目指し始めたのが遅く、とても皆と同じようにできませんでした。そのときはそう思い込んでしまいました。
 自分がなんのためにヴァイオリンを弾くのか、将来どうしたいかなど全く考えておらず、周りと自分を比較してあきらめてしまっていました。

 また、なぜかその頃から、技術を磨いてコンクールで賞を取ってオーディションに合格して…ということに情熱が持てませんでした。

 長時間テクニックの練習をしていると、弾きたい気持ちが失われるのが感じられ、それが受け入れられませんでした。また、人間はどこか欠点がある方が魅力的だと言う考えも常に自分の中にありました。

 でも、そんなことを考えるクラシックの演奏家など私の周りにはいませんでした。
 それは、クラシック音楽のプレーヤーが言ってはいけない言葉です。負け犬の遠吠えのようなものです。



 さて、結婚以来音楽からすっかり遠ざかっていた私でしたが、ここにきてようやく心から弾きたいと願うようになりました。

 それは、いつも自分に「自分が今死ぬとしたら何を後悔するだろうか?」と問いかけてきたからです。
 主人が亡くなって以来、いつもその問いかけで、行動を決めてきました。

 最初は、子どもと一緒に過ごす時間でした。今、子どもたちも大きくなり、残りの人生で何をやらなければ後悔するかと思ったとき、それが私にとってはヴァイオリンでした。

 やはり、自分が一番自分らしくいられるのはヴァイオリンを弾くことです。

 
 私は大学こそ藝大を卒業しましたが、コンクール歴もオーディション合格歴も、長期の留学経験もありません。あるのは、ヴァイオリンを通して皆さんにお伝えしたいことだけです。

今を生きていることのすばらしさ

ヴァイオリンの音色の美しさ

それぞれの曲が持つ、作曲者の思い

苦しみ・悲しみを経て初めて感じる深い喜び

 私の演奏を聴いて感動してくださる方がひとりでもいらっしゃるなら弾きたい、自分が表現することでなにか人に役立つことがあるのならやっていきたいという思いで演奏しています。

 もちろん、人前で弾くからには技術も必ず必要ですから、表現するためのテクニックの練習を欠かすことはありません。

 演奏の場を与えていただけることに心から感謝し、お聴きになる方がほんの少しでも幸せを感じてくださることを念じて、心を込めて弾きたいと思っております。

この長い文章をここまでお読みくださったあなたに、心から感謝いたします。
ありがとうございました。